相続放棄とは
どなたかが亡くなったときに、相続財産になるものには、預貯金、証券類、宝石、車などの動産や、不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や支払いの義務、負債を抱えた事業などのマイナスの財産もあります。プラスの財産を「積極財産」、マイナスの財産を消極財産といったりもします。
相続人は、その負の財産が多い場合、ほかの相続人に譲ってあげたい、相続が面倒な場合など、理由を問わずその財産の相続を放棄する権利が民法で認められています。
相続放棄のルール
相続の放棄は、主に被相続人の保有する負の財産が原因になります。負債には当然ながら債権者がおりそちらの権利も守る必要がありますので、相続の放棄にはいろいろなルールがあります。
相続放棄の期間
相続には、財産をすべて相続する「単純承認」、負債がどのくらいあるのかわからない場合に相続財産の範囲内で弁済して財産が残ったらもらう「限定承認」、財産をすべて放棄する「相続放棄」の3種類があり、どれを選ぶかは被相続人が亡くなってから3か月以内に決める必要があります。
そして民法には、相続に関する条文が882条から1050条までありますが、その一番最初に相続は死亡によって開始するとあります。
(相続開始の原因)
民法 第882条相続は、死亡によって開始する。
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC882%E6%9D%A1
つまり被相続人が亡くなって、3か月以内に放棄の手続きを行わない場合は、相続財産を単純承認したものとされ、負債は放棄できなくなってしまいます。
ですから負債の方が多い場合は、早めに限定承認か相続放棄の手続きをしなければなりません。相続を放棄したい場合の期限は思ったよりも短いので、真っ先に行うべき手続きの一つです。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
民法 第915条https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC915%E6%9D%A1
- 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
- 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
相続の全放棄
相続放棄を選んだ場合は、すべての財産を放棄しなければいけません。また負債がある場合に貯金は長男が相続して、負債は次男が相続放棄するというようなこともできません。
故人に負債がありそうな場合は、まずプラスとマイナスの両方の財産を確認しましょう。3か月以内にわからない場合や調べられそうもない場合は、専門家に相談して調べてもらうのも一つの方法です。
相続放棄ができない場合
相続の放棄は、被相続人が法律で認められた権利ですので通常は奪われることはありません。ただし、相続が始まってから被相続人の財産を処分した場合は、単純承認したとみなされて相続を放棄したり限定承認をすることができなくなります。
例えば、被相続人が残した骨とう品を売ってしまったり、預金が凍結される前に引き出したりした場合は、相続財産を放棄する前に使ってしまっているわけですから、放棄の意思がないとみなされても仕方がありません。
相続放棄の撤回
相続の放棄、限定承認は、一度してしまうと、相続開始から3か月間の熟慮期間中でも撤回することができません。
被相続人が預金や不動産の価値を超える借金をしていたとか、営んでいた事業で多額の負債がある場合などは、できるだけ早く債務も含めた財産の調査を行って、3か月以内に相続の方向性を決めなければなりません。
(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
第919条https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC919%E6%9D%A1
- 相続の承認及び放棄は、第915条第1項の期間内でも、撤回することができない。
- 前項の規定は、第1編注:(総則)及び前編注:(第5編 親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。
- 前項の取消権は、追認をすることができる時から6箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から10年を経過したときも、同様とする。
- 第2項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。