遺言書探しは相続のスタート地点
相続の際に遺言書があるのとないのとでは進め方が全く変わってきます。遺言書がなければ法律で定められた法定相続人が法定相続割合をベースに遺産分割協議を進めていきますが、被相続人が遺言書を用意している場合は被相続人の遺志が優先されます。
ですので、誰かが亡くなって遺言書があるかないかわからない場合、他のことはさておき、まず最初に遺言書を探すことになります。
これから遺言書を作成する方は、せっかく用意する遺言書が無駄にならないように、相続人に遺言書の存在を知らせておくか、後述する方法で自分の死後に通知がいくように準備しておきましょう。
ちなみに、遺言書が見つからずに遺産分割協議で相続の手続きをしたあとに遺言書が見つかった場合は、原則として被相続人の遺志である遺言書の内容が優先されます。
ですので遺言書の内容と遺産分割協議の内容が違っていて、遺言書の通りに遺産を分割したいという人がいれば、遺産を相続し終わった後でも相続をやり直すことになります。
一度分割した遺産をあとで分割しなおすのは大変なので、遺言書探しはがんばっておいた方がいいでしょう。(遺言書が出てきても、相続人全員が遺産分割協議の内容で同意すればやり直さなくてもOKです)
一般的な遺言書の種類は主に3種類
遺言書は主に3種類あって、種類によって探し方が全く異なります。自分であちこち探すものもありますし、問い合わせなどで分かる場合もあります。
そもそも自分が死んだらああして欲しいこうして欲しいという話を相続人の誰かとしていれば、遺言書の場所を伝えている可能性が高いので、まずは相続人同士で遺言書について何か知らないか聞いてみるところから始めましょう。
また最近はエンディングノートを書いている方が増えています。エンディングノートには、遺言書の置き場所が書いてあったり、エンディングノートが遺言書と一体化しているものもあります。
一番身近にあるのが自筆証書遺言
自分で書いて好きな場所に保管しておくタイプを「自筆証書遺言書」と呼びます。
遺言書は執行する人を指名している場合が多く、生前にその人に話している可能性も高いので、まずは遺言書が存在するのかしないのかを親族が集まったところで話してみましょう。誰かが何か知っていれば探す手間が省けるかもしれません。
保管場所は本人が好きに決めるものなので、自宅であればお財布、通帳、実印、証券や契約書などと同じ引き出しや金庫にあることが多いのではないでしょうか。自宅以外でしたら銀行の貸金庫にしまわれている場合もありますね。
家族が同居していて全く話したことがない場合は、生前は見られなくなくて隠している可能性もあります。引き出しの奥の方や、何かの下に隠しされていることも多いようです。
人気の公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証役場で公証人と証人2人が立ち会って作成する遺言書です。自筆証書遺言は自分で作成するので家庭裁判所の検認が必要ですが、法律のプロである公証人がチェックして作成するので検認の必要がありません。内容も基本的に法的に問題のないものが作られるので、いざというときに無効になるリスクが低いので「確かな遺言書を作成したい」という方に非常に人気がある確実性の高い遺言書です。
公正証書遺言は1989年1月1日以降に作成されたものはデータベース化されているので、お近くの公証役場で相続人や受遺者など「遺言について法律上の利害関係」がある人は検索することができます。
公正証書遺言を作成したと話していたとか、作成してそうだなと思ったら探してみるのもいいでしょう。
検索に必要な書類は、被相続人の除籍謄本など死亡が確認できる書類と、自分が利害関係者であることを証明できる資料、本人確認証、認印です。
(なお、遺言書を書いた本人が存命の間は、本人以外は検索できません。)
法務局の自筆証書遺言保管制度
2020年7月10日(令和2年)に始まった制度ですが、安価で確実性が高いとてもよいシステムです。
上述した自筆証書遺言を、法務局で内容を確認して問題がなければ法務局で保管してもらえます。原本の保管だけでなく、画像データでも保存されます。
そして本人が手続きをしていれば、死亡したときに指定した相手に遺言書が保管されている旨を通知するサービスがあります。
このサービスは本人が希望しないと行われません。
それと別にもう一つ、この保管制度を使った遺言書を、遺言者が死亡した後に、誰かが閲覧したり証明書を交付すると、すべての関係相続人に、自動で「関係遺言書保管通知」という連絡が届きます。
この自筆証書遺言保管制度で法務局で保管された遺言書は、遺言者の死亡後に法務局に問い合わせることで、存在するかしないかを確認することができます。この辺は公正証書遺言と似ていますね。
全国どこの法務局でも問い合わせの申請は可能で、窓口に行かず郵便で行うことも可能です。
遺言書探しのまとめ
① 自筆証書遺言は、自宅の貴重品などがある引き出しなどやエンディングノートと同じ場所、または銀行の貸金庫などを探しましょう。
② 公正証書遺言があるかないかは、相続人などが公証役場で検索の申請手続きで簡単にわかります。。
③ 自筆証書遺言保管制度は、遺言者の死後に自動で通知される場合もあります。通知がなくても法務局で申請すると存在するかわかります。