尊厳死宣言書とは
尊厳死宣言書とは、尊厳死を確かに希望しているという意思を書面で証明するものです。英語でリビングウィルとも呼ばれます。
尊厳死という言葉が定着し希望する人が増えてきましたが、2023年現在、日本では法整備が進んでおらず医療の現場ではまだまだ手探りの状態で最終的には医師の判断によるところもあります。
尊厳死宣言書は本人が意思を表示できない時に、医師や家族が治療方針を決める一つの材料になるでしょう。
尊厳死とは
尊厳死と一言で言ってもその解釈は人によって異なります。海外では尊厳死を希望する患者に薬物を投与して死を迎えさせるという、日本では自殺幇助や殺人に問われるようなことも合法化している国もあります。 日本では「回復の見込みがない患者に延命のみを目的とした治療をせず自然に任せる」といったところが一般的な尊厳死の定義でしょう。
では具体的にどこからが尊厳死でどこから違うのかというとそれはもう個人の感覚というか希望ということになります。
脳死患者の呼吸器を外すのは尊厳死ですか?
胃ろうを拒むのは尊厳死ですか?
栄養点滴を拒むのは尊厳死ですか?
こういったところは皆さん意見が分かれるところですので、尊厳死宣言書やエンディングノートに個別に記載したり家族や身近な人に自分の考えを伝えておくといいでしょう。
ちなみに割と有名な日本尊厳死協会では「延命措置」と「救命措置」を分けて考えており、治療するための「救命措置」を否定するものではないとしています。
尊厳死宣言書の法的な効力
尊厳死は日本ではまだ法的に認められた権利ではないので、尊厳死宣言書があれば医師は尊厳死の措置をしなければならない、というような決まりはありません。尊厳死宣言書は検討材料の一つにすぎません。
尊厳死宣言書は必要?
まずご本人が尊厳死を希望していることがわからなければ医師は対応できません。ご家族に伝えていれば医師はその意見を聞いて尊厳死を検討することになるでしょう。それに対して、尊厳死宣言書があれば医師もご本人にその意思があることが確認できるでしょう。
また日本尊厳死協会などでしっかり説明を受けたうえで尊厳死宣言書を作成したということが確認できれば、医師もより前向きに検討できるでしょう。
ただ尊厳死宣言書は法的な効力があるものではないので、書けば必ずその通りになるものではありません。特にいざというときにご家族が反対すれば、担当の医師もその意見も検討することになるでしょう。
尊厳死を望むなら宣言書もいい方法ですが、それとあわせてその際に居合わせてくれるであろう人に良く説明しておきましょう。
尊厳死宣言書に書く内容
遺言書のように法的に認められた制度ではないので、記載する内容も法律で決められているわけではありません。ここでは一般的に記載するとよいといわれる内容をまとめてみます。
延命治療を拒否し尊厳死を希望すること
まず宣言書の主題である尊厳死を希望することは必ず記載します。延命治療については、ひとくくりにして拒否しても構いませんし「植物状態になったら」「1週間以上意識が戻らなかったら」など具体的な状態や「胃ろうは希望しません」「人工呼吸器は〇日で外してほしい」など治療について希望を書いてもいいでしょう。
尊厳死を希望する理由
なぜ延命治療を拒否し尊厳死を選びたいと思ったのか、これもとても重要な項目です。というのも尊厳死という言葉は定義がはっきりしないため「尊厳死を希望します」だけでは患者が具体的にどのようにしたいのかが医師にも家族にもわかりにくく治療方針を決めかねるからです。
尊厳死を希望する理由はひとそれぞれあると思います。「機械を止めたら生きていられないのに回復しないとわかっていて生かされるのは嫌だ」「意識が戻らないとわかった段階で治療を止めて自然に死なせてほしい」「身内がガンで苦しみながら延命治療をしていたのを見て、緩和ケアだけにして欲しいと思っている」など具体的なことを書いておけば、それにぴったり当てはまらないケースでも、家族や医師はあなたの希望を想像しやすくなるでしょう。
尊厳死を希望することに、家族の同意があること
尊厳死は家族の同意が100%必要なわけではありませんが家族の同意は非常に重要です。というのも尊厳死をするかどうかを決めるときには、あなたはその意思を表示できない可能性があります。その時医師は、意識のないあなたの希望よりも家族の意見の方を優先する可能性があります。家族が反対してしまったらあなたの希望はかないません。
尊厳死に協力する医師に対し、民事上も刑事上も責任を問わないことを希望すること
尊厳死と安楽死は線引きがあいまいといいますか難しい問題です。過去に医師が患者の希望をきいたがために殺人罪に問われたこともあります。そのために医師としても患者が尊厳死を希望しているからといって希望を叶えてくれるわけではありません。
そこで将来あなたの治療に携わる医師に対し、尊厳死を希望していますがあなたにできる限り買いが及ばないように考えています、ということを書くことで医師も尊厳死に前向きになれるかもしれません。
本人が撤回しない限り尊厳死宣言書は有効であること
遺言書や契約書などの決まり文句ですが、これを自分の意志以外で勝手になかったことにされないようにするためのものです。
尊厳死宣言書はどこで作る
尊厳死宣言書は、インターネットでひな形を探して自分で作成しても構いません。日本尊厳死協会で少し会費を払って作ってもいいです。また公証役場でも証人付きで作れるので、遺言書などと一緒に作成してもらうのもいいですね。
法律で形式が決められたものではないのでどこでどのように作成しても構いませんが、いざというときに医師の手に渡るように段取りはしっかりしておきましょう。
尊厳死宣言書を作ったら
尊厳死宣言書を作成したらまずは家族や知人など、何かあった時に病院に来てくれる人に話しましょう。
その人たちに尊厳死について説明して理解してもらうこと、尊厳死宣言書を肌身離さず持っていないなら、医師に見せて欲しいことは伝えておかなくては、医師に尊厳死を希望すること自体伝わらないかもしれません。