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自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)

用語集

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは、文字通り自分の手で書かなければならないタイプの遺言書です。エンディングノートに付属されていることもありますね。

自分で直筆で書いて作るので、手軽でいろいろと便利な反面、デメリットもあります。特に法律で決められたとおりでないと、無効になってしまうこともあります。

ちなみに「遺言」の読み方は、(ゆいごん)と(いごん)のどちらも正しいですが、意味が若干違います。
(ゆいごん)は「広い意味で亡くなった後のために残すことば」全般を指しますが、(いごん)は「法的な要件を満たした遺言」のことで裁判所や法律家などが法律用語として使います。

自筆証書遺言のメリット

自筆証書遺言のメリットは何といっても自分一人でも無料で簡単に作成できること。その作成した遺言書を好きな時に気軽に変更できることでしょう。

公正証書遺言は作成にお金がかかりますし、書いたものは公証役場で保管されるので変更するときも自分で気軽に書き換えることはできません。

自筆証書遺言のデメリット

自筆証書遺言のデメリットは実は結構あります。

自分で書くので無効でもわかりにくい

自筆証書遺言は自分で書きます。専門家に内容を見てもらったうえで作成するなら問題ありませんが、自分ですべて作成するとなると、ちょっとしたミスで無効になってしまう恐れがあります。

上記のような法的な要件を満たしていないのはもちろん、字が汚い、資産の内容を書き間違えている、言い回しがわかりにくいなど、無効になる原因はいろいろあります。

自分ですべて行うのは安上がりですが、自信がない場合は一部でもいいので司法書士や行政書士などの専門家に相談しましょう。

捨てられる恐れ

遺言書が自分に都合が悪いと考える相続人が、捨ててしまったり、遺言書の存在を隠すというのは珍しい話ではありません。

ただし自筆証書遺言書保管制度というものを使うと、自筆証書遺言書を法務局で保管してもらえるので、捨てられることへの対策は可能です。

改ざんされる恐れ

捨てられるだけでなく、改ざんされるというのもドラマや小説の中だけの出来事ではありません。自筆ですからほかの人が書き直したらわかってしまうこともありますが、改ざんに気づかれずに相続が行われてしまう恐れもあります。

ただこちらも自筆証書遺言書保管制度を使えば、改ざんを防ぐことはできるでしょう。

自筆証書遺言の書き方

自筆証書遺言には法律できめられた3つの大きなルールがあり、そのルール通りになっていない場合は効力がありません。

(自筆証書遺言)
民法 第968条

  1. 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
  2. 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全文又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
  3. 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
民法第968条 – Wikibooks

自分の手で書くこと

自筆というだけあって、パソコンで打ったり代筆を頼んだりすることはできません。必ず遺言者本人が、全文・日付・氏名を自分で書かなければ遺言書としての効力がありません。手が動かなくて字が書けないとか、目が悪くて人が読んでも解読できる字を書く自信がないなど、自筆が難しい場合でも自筆証書遺言は代筆やパソコンで作成することは認められていません。
また口述する動画を撮影しても、内容は伝わると思いますが法的な効力はありません。

自筆証書遺言を作成するのが難しい場合は、公正証書遺言を作成する方がよいでしょう。

ただし資産の目録については2018年の民法改正で、パソコン等で作成して、各ページに署名と押印をすれば有効となりました。

押印すること

そして押印も必ず必要になります。押印する印鑑は三文判でもシャチハタでも無効になることはありません。ただし、時間の経過で劣化して押印が見えなくなったり、誰でも入手できる印鑑を押印して作ってしまうと、偽造されたり真贋を疑われることにもなりかねません。

押印に使用する印鑑は、できれば実印かオリジナルのものにした方がよいでしょう。

加筆や変更も署名押印を

一度書いた遺言書に、何かを書き加えたり一部を修正する場合は、全文を作り直さなくてもその部分を変更するだけで有効になります。

ただし条文にあるように、遺言者が変更する場所を示して、その変更について付記して、さらに署名と押印をしなければ、変更は有効になりません。

内容がわかりにくかったりしても、遺言書を使うときは自分ではもう説明できなくなっていますので、自分がいなくてもわかりやすく書くことが肝心です。

自筆証書遺言書の置き場所

完璧な遺言書を作成したとしても、その遺言書が相続に使われなければ意味がありません。そのために自筆証書遺言書を作成する場合は特にこの点に注意しなければなりません。

見つけやすい場所に保管する

まず誰にも見つからない場所に置くのは避けてください。誰かが探したときにちゃんと見つかる場所に保管するのが原則です。

銀行の貸金庫にしまう場合、セキュリティが万全なのは間違いありませんが、本人が亡くなってしまうと相続前に貸金庫の中身を取り出すのが非常に大変です。また貸金庫を借りていること自体伝えていないと、誰も気づかず相続が終わってしまう恐れもあります。

作成したことと保管場所を人に伝える

誰かが亡くなった時、相続の一番最初にすることは「遺言書を探す」ことです。遺言書があることを伝えて遺言執行者になる人が決まっていれば、最低でもその方には伝えておいた方がいいでしょう。

自筆証書遺言書保管制度で法務局に保管する

法務局には、自筆証書遺言書保管制度というものがあり、自筆証書遺言書を作成した場合に、有料ですが保管することができます。また自筆証書遺言書が保管してある場合に、推定相続人や遺言執行者に通知をするサービスもあります。

亡くなった後により確実に遺言を執行してもらいたい場合は、ぜひ利用していただきたい便利で安全な制度です。

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