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秘密証書遺言(ひみつしょうしょゆいごん)

用語集

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言書を作成したら、証人と一緒に公証役場に行くと公証人が「遺言書を作ったことを、証人と一緒に確認してくれる」というものです。 誰にも中身を見せずに封をするので、遺言の内容を本当に誰にも見せたくない方にはよい方法です。ただし中身を公証も証人も確認していないわけですから、公正証書遺言と違い内容について誰の保証もありません。ですから秘密証書遺言を使用するときには家庭裁判所の検認がなければ有効な遺言書とはいえません。

民法の条文にもあるので、法的に認められた立派な遺言書の形式の一つですが、じつは実用性は低く実際にこれを選ぶ方はほとんどいません。
というのも、秘密にしたければ公証人役場で保管される「公正証書遺言」や、法務局で保管される「自筆証書遺言書保管制度」を利用すれば、厳重に保管されるからです。

ちなみにタイトルでは読み方を(ひみつしょうしょ”ゆ”いごん)と書きましたが、専門家が使う専門用語としては「ゆ」がない(みひつしょうしょいごん)を使います。
遺言は(ゆいごん)とも(いごん)とも読みますが、法律用語としては(いごん)の方を使うので、どちらでも間違いではありません。

秘密証書遺言の手順

秘密証書遺言の作成手順は自筆証書遺言とも公正証書遺言とも少し違います。

遺言書を作成する

自筆証書遺言は、偽造や改ざんを防ぐために自筆で全文を書くことが絶対条件になっています。それに対して、秘密証書遺言は証人付きで本人が封印するので改ざんの恐れがないことから、パソコンで作成したものを印刷する形でも有効ですし、代筆してもらっても法的に問題ありません。
ただし、署名は自筆でしないと無効なので気を付けましょう。

完成した遺言書は、封をして遺言書に押印したのと同じ印鑑で封印します。

公証役場で手続きをする

そして、公証人と証人2人の前で、遺言書が入った封書を提出して、自分の遺言書であることを申述します。

最後に公証人が必要事項を封紙に記入して、遺言者本人、公証人、証人2人の合計4人で署名と押印して秘密証書遺言書の完成です。

(秘密証書遺言)
民法 第970条

  1. 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
    1. 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
    2. 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
    3. 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
    4. 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
  2. 第968条第3項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。
民法第970条 – Wikibooks

秘密証書遺言の保管場所

完成した秘密証書遺言書は、公正証書遺言のように公証役場で原本が保管されるのではなく、遺言書の原本を自分で保管しなければなりません。秘密で作るのはいいですが、破棄されたり紛失してしまう恐れもあります。

秘密証書遺言のメリット

とにかく中身を誰にも知られずに作成したい、という方にはメリットがありますが、それ以外はあまりメリットがないといえるでしょう。

秘密証書遺言のデメリット

まず作成時に公証人に立ち会ってもらいますが、中身を確認してもらわないので作成時に形式的なミスや内容に問題があっても、そのまま作成されてしまいます。
また作成しても保管は自分の責任で行わなければならず、亡くなった時に気づかれなかったり、紛失・破棄などで日の目を見ないということも考えられます。

せっかく遺言書を作っても、いざ開封したときに形式が要件を満たしていなかったり、希望が不明瞭だったり不正確で無効になったり、内容に法的な問題があって希望通りにならないということもあります。

行政書士や司法書士などの相続関係のプロに相談しても、遺言書の形式で勧められるのは秘密証書遺言ではなく、自筆で書いて法務局で保管してもらえる自筆証書遺言書保管制度の利用や、公証役場で保管する公正証書遺言の方でしょう。

また内容については、インターネットで遺言書のテンプレートがいくらでも見つかるので自分で書くのは簡単です。通常と少し変わった分割方法にしたい場合や、特別な希望がある場合は、プロに相談してみることをお勧めします。

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