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遺贈(いぞう)

用語集

遺贈とは

遺贈とは、遺言で遺産を贈与することです。

被相続人の遺産を受け取るのは、遺言がなければ相続人がいれば相続人に限られます。ただし、遺言書で指名した相手に「遺贈する」と書くことで、相続人ではない相手にも遺産を渡すことができます。相手は相続人にならない親族でもいいですし、友人知人、地方公共団体や法人、病院や学校など、希望すれば人でも団体でも大抵の相手に譲渡可能です。

例えばおじいさんが亡くなって、奥さんと子供と孫と両親と妹が生きているとします。その場合、相続人になるのは奥さんと子供だけで、それ以外の人は相続することはできません。でもおじいさんとしては、孫にはいくらかあげたいと考えているとします。その場合は、遺言書に「孫に〇〇を遺贈します」と記載することで、相続ではなく贈与をすることができます。

(包括遺贈及び特定遺贈)
民法 第964条
遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。

民法第964条 – Wikibooks

相続との違い

一般的に相続というと亡くなった方の財産を譲り受けること全般指す事が多いのですが、法律上は相続と遺贈は別の法律行為として処理されます。

法律上の「相続」とは、法律で決められた相続人だけが持つ権利です。妻がいれば妻は必ず相続人になります。それ以外は第一順位の子供、第二順位の直系尊属、第三順位の兄弟姉妹のうち、順位の高い人が生きていれば、それ以外の候補者は相続人になることはできません。
この法律で「相続人」と認められる人が財産や権利義務を受け取ることを相続といいます。

それに対して遺贈は「相続人以外」に遺産を贈与することを指します。
亡くなるときに被相続人が何も残していなければ相続人がすべて相続することになりますが、被相続人が亡くなる前に財産を残したい相手を法律で決められた相続人遺言書で指定すれば、相続人以外にも遺産を贈与ことができます。
子供よりも孫に直接渡したいとか、よくしてくれたヘルパーさんにあげたいとか、地域の役に立てて欲しいとか、趣味で集めたものは趣味の仲間に受け取って欲しいなど、理由や物は様々ですがそういった願いをかなえるのは相続ではなく遺贈ということになります。

ちょっと難しくなってしまいましたが、相続も遺贈も被相続人の遺産を受け取るという意味では違いはありません。
違いとしては、被相続人が亡くなった後に、相続人は自然に相続しますが、相続人以外の相手に財産を残したい場合は、遺言書に書き残しておく必要がある、ということです。

死因贈与との違い

同じく遺産を相続人以外に譲渡するのに死因贈与という方法もあります。死因贈与と遺贈は似ていますが、死因贈与は「贈与する相手が贈与に合意していて贈与する契約を結んでいること」が条件になります。それに対して遺贈は「遺言書で遺贈する旨を記載していること」が条件です。

遺贈の際の遺言書の書き方

遺贈を希望する場合、遺言書に書くべきことは3つあります。

相手を受遺者として記載する

相手を遺産を受け取る「受遺者」として、氏名等を記載する必要があります。

贈与したい遺産を記載する

遺贈したい相続財産の内容をしっかり記載しましょう。複数人に分ける場合は、それぞれの割合なども記載する必要があります。

「遺贈する」と記載する

法定相続人に遺贈する場合は、「相続する」でも「遺贈する」でもどちらでも構いません。でも遺産を相続人でない人に残したい場合は「相続する」と記載してしまうと無効になります。
必ず「遺贈する」と記載しましょう。

遺贈は相続税?贈与税?

「相続と遺贈は別のものです」というと相続は「相続税」、遺贈は「贈与税」という風に誤解されがちですが、実はどちらも相続税の対象になります。

遺贈が認められないケース

形式通りに正しい遺言書が作成されていないと遺贈が認められないのは当たり前ですが、それ以外にもいくつか無効になるケースがあります。本人の意思が一番大事、と言ってもなんでも認められるわけではないということですね。

遺言能力がない

高齢だったり認知症だったりすると、重大な決定をする能力がなかったということで、無効を争われるケースが非常に多くなっています。とくに認知症と診断されてしまった後の遺言は、医師が遺言書の作成時に証人として遺言能力を認めるような特別な形で作成しないと、遺言書に異議を申し立てられたときに有効性を認められるのは難しくなります。
認知症といっても、症状は様々ですしご本人もご家族も「これについてはボケて言っているわけではない」とわかっているようなことでも、法的に争うことになると難しい場合もあります。

遺言書は何度も書き直すことができるので、最初から完璧なものを作る必要はありません。「これだけは相続人ではなく〇〇に遺贈したい」というような希望があれば早めに作成しておくと安心です。

公序良俗に反している

また遺言書の内容として、公序良俗に反する内容は遺言として認められません。よくあるのが不倫相手への遺贈です。不倫相手は法定相続人にはなりませんので、遺言書で遺贈するか生前贈与することが多いのですが、親族がそれをよしとしない場合は争うことになります。

また弁護士や管財人などの遺言の作成に関与する人が、自分に都合のいい遺言書を作らせたのではないか、ということで遺言書の公序良俗違反が争われたこともあります。

どちらにしても、直ちに無効になるわけではなく、争いが起きた場合に状況に応じて司法の判断があるということになります。

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