相続法とは
相続法という名称の法律はありませんが、一般的に相続関係のいろいろな法律をまとめて「相続法」と呼ぶことがあります。
まず民法の第5編が「相続」となっていて、こちらが相続関連の法律のメインになります。これだけを指して「相続法」と呼ぶこともあります。
それから相続税に関する規定を定めた相続税法。
この2つが相続税法と呼ばれますが、その他戸籍法など相続に係る規定があります。
民法5編 相続
日本の民法は1050条の条文が、全5編に分かれて構成されています。
第1編は【総則】(第1条~第174条の2)。民法全体の原理原則を定めたものです。そのあとに財産関係の法律である第2編の【物権】(第175条~第398条の22)、第3編の【債権】(第399条~第724条)が続きます。そして民法の中でも家族法に分類される第4編の【親族】(第725条~第881条)があり、最後の第5編が今回のメインになる【相続】(第882条~第1050条)の規定になります。
そして相続に関する条文は下記の全10章に分かれています。
民法5編 相続
第1章 総則(第882条~第885条)
第2章 相続人(第886条~第895条)
第3章 相続の効力(第896条~第914条)
第4章 相続の承認及び放棄(第915条~第940条)
第5章 財産分離(第941条~第950条)
第6章 相続人の不存在(第951条~第959条)
第7章 遺言(第960条~第1027条)
第8章 配偶者の居住の権利(第1028条~第1041条)
第9章 遺留分(第1042条~第1049条)
第10章 特別の寄与(第1050条)
相続 第1章 総則
第1章の総則は4条で構成されています。相続の開始について、相続権を侵害された時の回復について、それから相続にかかる費用について定めたものです。民法全体の総則はこと細かに定められていますが、第5編の相続に関する総則はこれしかなくちょっと物足りない感もありますね。
相続 第2章 相続人
相続の第2章は、相続人に関する10条です。胎児の相続権、相続順位1位の子供と代襲相続、それに相続順位2位の直系尊属と3位の兄弟姉妹の相続権、それから配偶者の相続権についての規定があります。
それから本来相続人になるはずの人が相続欠格になる場合の欠格事由と、それよりも少し軽い推定相続人の廃除に関する規定に4条が割かれています。
相続の中でも基礎になる非常に重要な章になっています。
相続 第3章 相続の効力
第3章の相続の効力の章は、全部で28の条文があり、効力に関する基本的なルールになる総則と、相続分、遺産の分割の3つの節に分かれています。
この章も前章と同じくらい重要な章で、相続をするとはどういうことか、相続人にはどのような権利があるのか、また相続人が負う義務とはどういったものなのか、遺産はどのように分けるのかなどをかなり細かく規定しています。
相続 第4章 相続の承認及び放棄
第4章では、第3章で規定された「相続の効力」を、承認する場合と放棄する場合の説明がなされています。特に相続には他人の権利や義務が関わることもありますので、
相続 第5章 財産分離
財産の分離とは、相続人のもともともっている財産と相続財産を分離することで、相続財産を守るというような目的で行われます。
例えば、相続財産に預貯金などのプラスの財産が200万円と、B銀行からの借入金の負債が100万円あったとします。
これを相続する人が相続時点で、100万円の資産と500万円の負債があるとします。
B銀行は、相続前は回収できそうでしたが、相続人が債務超過を起こしていて、相続財産を自分の負債の返済に充ててしまうと、債権者のB銀行は回収ができなくなってしまう可能性があります。
こういった場合に、遺産の債権者を守るためにこの5章で、財産分離の請求ができる旨や、分離した遺産の扱いや弁済などについて、合計10の条文で規定しています。
相続 第6章 相続人の不存在
故人に相続人が存在しない場合も、遺産が存在していればプラスの財産なら処分したり、マイナスの財産なら債権者が回収するなど、清算できるようにしなければなりません。
そのため第6章では合計9の条文を割いて、相続財産法人や清算人についてや、財産の清算方法や残余財産の国庫への帰属などを規定しています。
相続 第7章 遺言
第7章の遺言は、相続全体の約3分の1にあたる60条ほどが割かれています。遺産の相続は遺言があるかないかで大きく変わってきます。まさに遺言の章は大きく5つの節に分かれており、それぞれの条文で非常に細かく規定されています。
第1節 総則(第960条 – 第966条)
第2節 遺言の方式(第967条 – 第984条)
第3節 遺言の効力(第985条 – 第1003条)
第4節 遺言の執行(第1004条 – 第1021条)
第5節 遺言の撤回及び取消し(第1022条 – 第1027条)
相続 第8章 配偶者の居住の権利
2018年の民法改正で新しくできた「配偶者居住権」の章です。
被相続人の配偶者が遺産の相続の都合で、もともと住んでいた家に住めなくなってしまうと、高齢の配偶者の生活が破綻してしまう恐れがあります。
この新しい配偶者居住権は、一定の条件を満たせば、残された配偶者がその建物の所有権がなくても、無償で住むことができるというものです。
今までは所有権がなくなってしまうと住むことができなくなる恐れがありましたが、配偶者の居住権を所有権と別にすることで、残された配偶者が住む権利だけを相続して住み続けられるのです。
この章では配偶者居住権の説明、配偶者居住権の取得、期間、登記、性質、修繕、費用の負担、返還などを1028~1036条の9か条で規定しています。
相続 第9章 遺留分
遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に保障された最低限の相続分のことです。
例えば相続人の一人に生前にすべての財産を贈与していたり、遺言で極端に不公平な相続の分配をしていても、兄弟姉妹以外の相続人は、自分の遺留分の相続を主張することができます。
第9章では、遺留分の割合、計算方法、遺留分が侵害された場合の請求方法、遺留分の放棄などを規定しています。
相続 第10章 特別の寄与
被相続人に対して、生前に無償で介護などで「特別の寄与」をしていた場合の取り扱いについての規定で、こちらも2018年の民法の大改正で新設されました。
ただしここで規定される「特別寄与料」は、残念ですが特別な寄与の多大な負担に見合っているかというと、バランスが取れたものとは言い難いものとなっています。