法定相続情報証明制度とは
簡単に言うと、相続の際に必要な書類を法務局で認証してもらい、簡単に代用できる書面を発行してもらう制度です。
相続手続きがはじまると、預金、不動産、保険、証券、動産などの名義変更や手続きなどで、相続をする権利があることを証明する必要があります。
そしてその際には、証明するための書類として、戸籍謄本や住民票などを、いちいち提出する必要があり、取得するためのお金も手間も馬鹿になりません。
特に、昭和生まれの方が被相続人だった場合は、戸籍が何通も必要で、その費用だけで手続きのたびに数千円と取得するための手間もかかります。
そこで平成29年から、その手続きに使う書類の提出を簡略化するために、法務局が相続情報を確認し、お墨付きを与えるという制度を開始しました。
法定相続情報一覧図が使用できる手続き
不動産の相続登記
預貯金の相続手続
保険金の請求
保険の名義変更手続
有価証券の名義変更手続
自動車の名義変更手続
法定相続情報一覧図は必要?
法定相続情報一覧図は相続財産の名義変更などで、第三者に相続する資格があることを証明するためのものです。法定相続情報一覧図でなくても戸籍謄本など一式をそろえれば同じことですので、相続に必ず必要な書類ではなく一覧図を作成しなくても問題ありません。
ただその手続きが何度もあると、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、相続人全員の書類までをその度にそろえる必要があります。それに対して、法定相続情報一覧図を一度作成してしまえば、法務局でも銀行・証券会社でも車の手続きでも何度でも使用できます。
まとめると、何度も名義変更などの手続きがあるなら作っておいた方が絶対便利でお得です。逆にそんなに相続の手続きはないから大丈夫という方は作るメリットはないでしょう。
法定相続情報一覧図の作成方法
手続の前に
この「法定相続情報一覧図」は、法定相続人が、相続関係の手続きを簡略化するために使用するものです。ですので、使用者は当然ですが民法で定められた「相続人」に限られることになります。そしてこの「法定相続情報一覧図」の申し出は、相続人当人、または相続人が委任する代理人しかすることができません。
また、この制度は相続人の戸籍謄本の情報をもとに「法定相続情報」を作成します。そのため「被相続人」や「相続人」が日本国籍を有しない場合、戸籍や除籍の謄本、抄本を提出できない場合は「法定相続情報」を作成することができないので、この制度を利用することができません。
(利用したくても必要書類が提出できないので)
必ず必要な書類
被相続人の戸籍謄本と、除籍謄本
被相続人の法定相続人を確認するために、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と、除籍謄本が必要です。
(被相続人の本籍地の市区町村役場で取得します)
被相続人の住民票の除票の写し
戸籍と併せて、被相続人の住民票の除票の写しも必要になります。
(被相続人の最後の住所地の市区町村役場で取得します)
住民票が取れない場合は、代わりに戸籍の附票を用意します。
相続人の戸籍謄本又は抄本
これも、相続人を特定するために必要な書類です。謄本でも抄本でも被相続人との関係が確認できればどちらでも構いません。
※被相続人が死亡した日以降に発行されたものが必要です
(各相続人の本籍地の市区町村役場で取得します)
必要になることがある書類
相続人の住民票
法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載したい場合は、住民票が必要になります。
住所の記載がない場合、住所を確認するものを求められなければ問題ありませんが、住所を確認するものを提示された場合には別途住民票などの書類を提出する必要が出てきます。
ほぼ必要ないなら住所は記載しないというのも一つの方法ですし、念のため住所を記載して万一に備えるというのも一つの方法でしょう。
私は銀行手続等で後で面倒になるのもいやなので、相続人全員の住民票も併せて提出して作成しました。
代理人の委任状
法定相続情報一覧図の申出を、親族のほか,弁護士,司法書士,土地家屋調査士,税理士,社会保険労務士,弁理士,海事代理士及び行政書士に依頼することができます。
本人が申出る場合は、法定相続情報一覧図の申出書に記載しますが、代理人は法定相続情報一覧図の申出書にはいない方になるので、委任状と同時に代理人としての身分証を提出する必要があります。親族が代理人の場合は親族との関係を表す戸籍謄本等が必要で、税理士、司法書士や行政書士などに委任する場合は、代理人の団体の身分証明書の写し等を提出することになります。
法定相続情報一覧図の作成
法定相続情報は、法律で相続人に定められた方すべてを記載する必要があります。被相続人の戸籍をたどって、相続人に該当する全員を記載した一覧表を作ります。
一覧図は必要事項が記載されていれば、手書きでもいいですし、ワードやエクセルなどの書類ソフトを使って作成してもOKです。
法務局のホームページに、作成が必要なものの雛形が用意されていますので、ダウンロードして簡単に作成できます。
主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例:法務局 (moj.go.jp)
法定相続情報の申込方法
上記の必要書類が用意できましたら、申出書に必要事項を記載して、必要書類と一緒に登記所に提出します。
申出書
こちらも一覧図と同様に、法務局のホームページでダウンロードできるようになっていますので、そちらをプリントアウトして記入すれば簡単に作成できます。
法定相続情報証明制度の具体的な手続について:法務局 (moj.go.jp)
提出方法
登記所は以下の4つから選択できます。
- 被相続人の死亡時の本籍地
- 被相続人の最後の住所地
- 申出人の住所地
- 被相続人名義の不動産の所在地
申出書を提出してから実際に交付されるまでは1週間以上かかりますので、作成したい場合は早めに手続きを進めましょう。
ちなみに、提出した戸籍謄本や住民票は法定相続情報一覧図ができると法務局から返却されます。